実家の老朽化が進み、あちこち修繕が必要なのは分かっているけれど、いざリフォームを考えると「お金がない」という現実に直面し、頭を抱えてしまう方は少なくありません。親の年金だけでは心もとなく、自分たちの家計も住宅ローンや子どもの教育費で手一杯。そんな八方塞がりの状況で、どうすれば大切な実家を守り、親に安心して暮らしてもらえるのでしょうか。
この記事では、実家のリフォーム費用が用意できずに悩んでいる方へ、具体的な解決策を提示します。補助金やローンの活用法から、工事の優先順位のつけ方、さらには売却という選択肢まで、予算がなくても前に進むための方法を分かりやすく解説します。不安な気持ちに寄り添いながら、現実的な選択肢を一緒に探していきましょう。
この記事のまとめ
- 予算がなくても、補助金・ローン・工事の分割・売却という4つの選択肢から最適な方法を検討できます。
- 親名義の家に子が費用を出す場合、贈与税のリスクがあるため、資金計画と名義の扱いを慎重に考える必要があります。
- 工事には優先順位があり、「安全」に関わる修繕を最優先し、予算内でできることから着実に進めることが重要です。
実家のリフォーム費用が用意できない典型パターン
実家のリフォーム費用が壁となり、計画が頓挫してしまうケースには、いくつかの共通したパターンがあります。なぜ資金計画が難しいのか、まずはご自身の状況と照らし合わせながら、典型的な3つの理由を見ていきましょう。
親に年金以外の収入がない
多くの高齢者世帯では、主な収入源が公的年金のみというケースは珍しくありません。現役時代に貯めた預貯金も、日々の生活費や医療費、介護費などで少しずつ減っていきます。
こうした状況では、数百万円単位のリフォーム費用を一度に捻出するのは極めて困難です。親自身も「子どもに迷惑はかけられない」という思いから、家の不便さや危険性を我慢してしまう傾向があります。しかし、放置すればするほど建物の劣化は進み、結果的により大規模で高額な工事が必要になる悪循環に陥りがちです。
子世代も住宅ローンや教育費を抱えている
親を助けたい気持ちはあっても、子世代の家計に余裕がないのも現実です。40代から50代は、自身の住宅ローンの返済や子どもの教育費がピークに達する時期と重なります。
「実家のリフォームも気になるけれど、まずは自分たちの生活を守るのが精一杯」というのが正直なところでしょう。特に、遠方に住んでいて実家の状況が詳しく分からない場合、問題の深刻さに気づくのが遅れ、いざリフォームが必要になったときには手持ちの資金がない、という事態に陥りやすいのです。
見積もりが想定の2倍だった
いざリフォーム会社に見積もりを依頼してみて、その金額に驚くケースも少なくありません。「キッチンの交換だけなら100万円くらいだろう」と想定していたら、壁や床下の傷みが発覚し、追加工事で200万円を超えてしまった、ということもあります。
築年数が古い家ほど、目に見えない部分(構造躯体、断熱材、配管など)に問題を抱えている可能性が高くなります。表面的な修繕だけでなく、根本的な改修が必要と判断されると、見積もり額は当初の想定をはるかに上回り、資金計画そのものを見直さざるを得なくなります。
予算がなくても進める4つの選択肢
手元にまとまった資金がなくても、実家のリフォームを諦める必要はありません。状況に合わせて検討できる、現実的な4つの選択肢をご紹介します。それぞれの特徴を比較し、ご自身の家庭に合った方法を見つけましょう。
| 選択肢 | 自己負担 | 実現までの時間 | 条件・ハードル | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 補助金・助成金 | 軽減できる | 申請・審査に時間 | 対象工事・要件あり | 省エネ、耐震、バリアフリー工事をしたい |
| リフォームローン | 後払い(分割) | 早い | 審査あり・金利負担 | まとまった資金はないが、安定収入がある |
| 段階的リフォーム | 管理可能な範囲 | 長期 | 計画性が必要 | 緊急箇所だけ先に、数年かけて全体を直したい |
| 売却・住み替え | リフォーム不要 | 物件による | 親の合意・手間 | 親が施設入居や子と同居を考えている |
補助金・助成金を使う
国や自治体は、特定の性能を向上させるリフォームに対して補助金や助成金制度を用意しています。これらを活用すれば、自己負担額を大幅に抑えることが可能です。
代表的なものに、断熱改修などを対象とした省エネ関連の補助金、手すりの設置に使える介護保険の住宅改修費、地震に備える耐震補強工事への助成などがあります。制度ごとに予算や申請期間、要件が細かく定められているため、リフォームを検討し始めたら、まずは利用できる制度がないか情報収集することから始めましょう。
リフォームローンを使う
金融機関が提供するリフォームローンを利用すれば、手元に資金がなくてもリフォームに着手できます。住宅ローンに比べて審査が比較的スピーディーで、担保が不要な商品も多くあります。
金利は住宅ローンより高めに設定されていることが多いですが、計画的に返済できるのであれば有効な選択肢です。特に、雨漏りや構造の不具合など、放置すると被害が拡大してしまう緊急性の高い工事には、ローンを活用してでも早めに対処することをおすすめします。
工事範囲を絞って段階的に進める
一度にすべてのリフォームを行うのが難しい場合は、工事の優先順位をつけ、数回に分けて段階的に進めるという方法があります。
まずは、雨漏りや耐震性など、安全性に直結する最も緊急性の高い箇所から着手します。そして、数年後に資金を貯めてから水回り、さらにその次に内装、といった形で計画を立てます。この方法なら、一度の出費を抑えつつ、着実に住環境を改善していくことができます。ただし、工事を分けることで総額が割高になる可能性には注意が必要です。
売却・住み替えに切り替える
リフォームに多額の費用がかかる場合や、親が一人暮らしで今後の生活に不安がある場合などは、思い切って実家を売却し、住み替えるという選択肢も視野に入ります。
売却して得た資金で、管理がしやすいマンションやサービス付き高齢者向け住宅に移り住む、あるいは子世帯の近くに引っ越すといったケースです。もちろん、親の気持ちや思い出の詰まった家を手放すことへの抵抗もあるため、家族で十分に話し合う必要があります。
実家リフォームで使える補助金(2026年版)
リフォーム費用を抑える上で、補助金制度の活用は欠かせません。ここでは、2026年時点で利用が想定される代表的な3つの制度と、利用する上での注意点を解説します。
国の省エネ・断熱リフォーム支援
地球温暖化対策の一環として、国は住宅の省エネ性能を高めるリフォームを強力に支援しています。具体的には、以下のような工事が対象となることが多いです。
- 断熱改修:壁や天井、床への断熱材の追加、内窓の設置や外窓の交換
- 高効率設備の導入:エコキュートやハイブリッド給湯器など、省エネ性能の高い給湯器への交換
これらの制度は補助額が大きいのが特徴ですが、予算が上限に達すると早期に終了する場合があるため、常に最新の情報を確認することが重要です。
介護保険の住宅改修費(上限20万円)
親が要支援・要介護認定を受けている場合、介護保険制度を利用して住宅改修費の支給を受けることができます。支給額は、工事費用のうち上限20万円まで(所得に応じて自己負担1〜3割)が原則です。
対象となるのは、自立した生活を支援するための小規模な改修です。
- 手すりの取り付け
- 床の段差解消
- 滑りにくい床材への変更
- 引き戸などへの扉の取替え
- 和式便器から洋式便器への取替え
申請にはケアマネジャーが作成する理由書が必要になるなど、手続きが決まっています。まずは担当のケアマネジャーに相談することから始めましょう。
自治体の耐震・バリアフリー補助
お住まいの市区町村でも、独自のリフォーム補助制度を設けている場合があります。特に多いのが、地震による倒壊を防ぐための耐震診断・耐震補強工事への補助や、高齢者の方が安全に暮らすためのバリアフリー改修への補助です。
補助額や対象要件は自治体によって大きく異なるため、「(市区町村名) リフォーム 補助金」などのキーワードで検索し、ウェブサイトを確認したり、役所の担当窓口に問い合わせたりしてみましょう。
併用可否と申請タイミングの注意点
補助金制度を利用する上で最も注意したいのが、制度の併用と申請のタイミングです。
- 併用の可否:国の制度と自治体の制度など、内容が異なれば併用できる場合があります。一方で、同じ工事箇所に対して複数の補助金を受け取ることはできないのが一般的です。どの制度を組み合わせるのが最も有利か、リフォーム会社にも相談しながら検討しましょう。
- 申請のタイミング:ほとんどの補助金は「工事契約前」または「工事着工前」の申請が必須です。契約後や工事完了後に制度の存在を知っても、遡って申請することはできません。リフォーム計画の初期段階で、利用できる補助金をリストアップしておくことが成功の鍵です。
ローンと資金負担の考え方
補助金だけでは費用を賄いきれない場合、ローンを組むことになります。ここでは、ローンの種類や、子が親の家のリフォーム費用を負担する場合の税金の問題について解説します。
リフォームローンと住宅ローンの違い
リフォームで利用できるローンには、主に「リフォームローン」と「住宅ローン」の2種類があります。
- リフォームローン:リフォーム費用に特化したローン。無担保型が多く、手続きが比較的簡単でスピーディーなのがメリットです。ただし、金利は住宅ローンより高め(年2〜5%程度)で、借入期間も短めです。
- 住宅ローン:家の購入と同時にリフォームする場合や、借り換えの際にリフォーム費用を上乗せする形で利用します。低金利(年1%前後)で長期間の借入が可能ですが、担保提供が必要で審査も厳格です。
緊急性の高い小〜中規模のリフォームであればリフォームローン、大規模なリフォームや借り換えを検討しているなら住宅ローン、というように目的によって使い分けるのが一般的です。
親名義の家を子が払うときの贈与税リスク
ここで非常に重要な注意点があります。それは、親名義の実家のリフォーム費用を、子が負担した場合、その費用が「子から親への贈与」とみなされ、贈与税が課される可能性があるということです。
年間110万円の基礎控除額を超える金額を負担すると、原則として贈与税の申告と納税が必要になります。例えば、子が300万円を負担した場合、基礎控除を引いた190万円に対して贈与税がかかる計算です。事前に税金の知識を持っておくことが不可欠です。
親子リレー返済・持分の設定という方法
贈与税のリスクを回避し、親子で協力して資金計画を立てる方法がいくつかあります。
- 持分の設定(共有名義化):子が負担したリフォーム費用分だけ、実家の所有権(持分)を子に移転(登記)する方法です。例えば、評価額2,000万円の家に子が500万円を出した場合、家の4分の1を子の持分とします。これにより、子の出費は「贈与」ではなく「不動産の取得」となるため、贈与税はかかりません(不動産取得税や登記費用は別途かかります)。
- 親子リレーローン:親が主債務者、子が連帯債務者となり、二世代にわたって返済していくローンです。当初は親が返済し、将来的に子が引き継ぐ形を取ります。二人の収入を合算して審査を受けられるため、借入可能額を増やせるメリットがあります。
これらの方法は手続きが複雑なため、金融機関や司法書士、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
優先順位のつけ方:安全→機能→見た目
限られた予算を最大限に有効活用するには、工事に優先順位をつけることが何よりも重要です。「どこから手をつけるべきか」を判断するための考え方と、具体的な費用感を解説します。
以下のマトリクスは、工事を「緊急度」と「費用」の2軸で分類したものです。まずは「A」の領域から対処し、予算に応じて「B」「C」と進めていくのが賢明です。
| 費用:小 | 費用:大 | |
|---|---|---|
| 緊急度:高 | A. 最優先で対応 ・雨漏り修理(部分的) ・シロアリ駆除 ・給湯器の故障修理・交換 ・手すり設置、段差解消 | B. 計画的に対応 ・屋根の葺き替え、外壁塗装 ・耐震補強工事 ・構造躯体の修理 |
| 緊急度:低 | C. 予算があれば対応 ・壁紙の張り替え ・蛇口、シャワーヘッド交換 ・照明のLED化 | D. 余裕があれば検討 ・間取りの変更 ・キッチン、浴室全体の交換 ・デザイン性の高い内装 |
先送りしてはいけない工事(雨漏り・シロアリ・耐震)
建物の寿命と家族の安全に直結する工事は、他の何よりも優先すべきです。
- 雨漏り:放置すると柱や梁などの構造材を腐らせ、家の強度を著しく低下させます。被害が広がる前に、原因を特定して修理することが必須です。
- シロアリ被害:土台や柱を食べ進み、耐震性を大きく損ないます。床がきしむなどの兆候があれば、すぐに専門家による調査を依頼しましょう。
- 耐震性の不足:特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた家は、大地震で倒壊するリスクがあります。自治体の耐震診断を受け、必要であれば補強工事を検討すべきです。
後回しにできる工事(内装・設備のグレード)
一方で、生活の快適性を高めるものの、緊急性が低い工事は後回しにできます。
- 内装の見た目:壁紙の汚れや床の傷などは、安全性に直接的な影響はありません。
- 設備のグレード:キッチンや浴室などの設備は、まだ使えるのであれば無理に最新モデルに交換する必要はありません。
見た目をきれいにしたい気持ちは分かりますが、まずは「安全」と「機能」を確保することを最優先に考えましょう。
費用を抑える発注の工夫
同じ工事でも、発注の仕方を工夫することで費用を抑えられる場合があります。
- 相見積もりを取る:必ず複数のリフォーム会社から見積もりを取り、工事内容と金額を比較検討しましょう。価格交渉の材料になるだけでなく、信頼できる業者を見極めることにも繋がります。
- 設備の施主支給:キッチンやトイレなどの設備を、自分で安く購入し、施工会社に取り付けだけを依頼する方法です。ただし、保証の問題や、施工会社が対応してくれない場合もあるため、事前に確認が必要です。
- シンプルに徹する:デザインに凝ったり、多くのオプション機能を付けたりすると、費用は上がっていきます。機能性を重視し、シンプルな内装や設備を選ぶことで、コストを抑えることができます。
| 予算 | できることの目安(工事費・税込) |
|---|---|
| 〜50万円 | ・トイレの交換(15〜30万円) ・洗面化粧台の交換(15〜30万円) ・給湯器の交換(20〜40万円) ・室内手すりの設置(5〜15万円) ・小規模な雨漏り修理 |
| 〜150万円 | ・ユニットバスの交換(80〜150万円) ・システムキッチンの交換(70〜130万円) ・外壁塗装(足場代込み、80〜150万円) ・内窓設置(5〜10箇所、50〜100万円) |
| 〜300万円 | ・屋根の葺き替え・カバー工法(150〜250万円) ・外壁と屋根の同時リフォーム(200〜300万円) ・耐震補強工事(補助金活用で150〜250万円) ・水回り3点(キッチン・浴室・トイレ)のセット交換 |
※上記は一般的な目安です。建物の状況や使用する建材のグレードによって金額は大きく変動します。
まとめ
実家のリフォーム費用がないという問題は、多くのご家庭が直面する切実な悩みです。しかし、手元にまとまったお金がないからといって、すぐに諦める必要はありません。
まずは、補助金やローン、工事の分割、売却という4つの選択肢の中から、ご自身の状況に最も合うものは何かを冷静に検討しましょう。そして、限られた予算の中で最大の効果を得るために、「安全・機能・見た目」という優先順位を明確にすることが重要です。特に、雨漏りや耐震性など、建物の寿命と家族の命に関わる工事は先延ばしにせず、早めに対処すべきです。
親名義の家に子が費用を出す際の贈与税の問題など、専門的な知識が必要な場面も出てきます。家族だけで抱え込まず、リフォーム会社や金融機関、必要に応じて税理士などの専門家の力も借りながら、最適な解決策を見つけていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 親がリフォームに反対しています。どう説得すればいいですか?
まずは親の気持ちを尊重し、なぜ反対なのか理由を丁寧に聞くことが大切です。「お金がもったいない」「住み慣れた家を変えたくない」といった不安があるかもしれません。その上で、「このままでは地震の時に危ない」「冬のヒートショックが心配だ」など、安全や健康面からリフォームの必要性を客観的に伝えましょう。補助金を使えば負担が軽くなることや、小さな工事から始められることを伝え、安心させてあげることも重要です。
Q2. 補助金の申請は自分でできますか?
制度によってはご自身で申請することも可能ですが、多くの場合、必要書類が複雑で手続きが煩雑です。多くのリフォーム会社は補助金申請のサポートを代行してくれます。補助金の活用実績が豊富な会社であれば、最新の情報にも詳しく、スムーズな手続きが期待できるため、業者選びの際に申請サポートの可否を確認することをおすすめします。
Q3. 悪徳業者に騙されないためにはどうすればいいですか?
以下の点に注意してください。1. 「今だけ」などと契約を急かす業者を避ける。 2. 必ず複数の会社から相見積もりを取り比較する。 3. 見積書の内訳が詳細に記載されているか確認する。 4. 建設業許可などを持ち、信頼できる会社かチェックする。少しでも不安を感じたら、その場で契約せず、家族や第三者に相談することが大切です。
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