結論:におい・カビ・結露の多くは換気“量”の不足ではなく、換気“経路”の設計不良が原因。給気→移動→排気の“空気の道”を整え、24時間換気×局所換気×気密のバランスを最適化することで、小規模工事でも体感は大きく改善します。
1. 症状別チェックリスト(まずは現状把握)
- 湿度:相対湿度が60%超が常態/洗面所や収納で70%超が頻発
- 結露:窓枠・クローゼット壁面・玄関ドアに水滴/黒ずみ
- におい:洗濯物の生乾き臭/玄関のこもり臭/収納の古紙・繊維臭
- カビ:浴室以外(洗面・天袋・押入れ)の点在する黒カビ
- 体感:朝の喉の違和感、在宅時の眠気・だるさ(CO2高止まりの兆候)
→ 2〜3項目以上当てはまる場合、換気経路の再設計が有効です。
2. 基本の考え方:計画換気の三要素(給気・移動・排気)
- 給気(新鮮空気の入口):居室・玄関・収納に適切な給気口を設け、花粉期はフィルター運用。
- 移動(通り道):室内ドアのアンダーカット(10〜20mm)、欄間・スリット・移動用ガラリを確保。扉を閉めても空気が動く設計に。
- 排気(出口):洗面・トイレ・浴室など“湿気源”側に機械排気を配置。弱運転の連続+必要時の強運転が基本。
- バランス:給気<排気の軽い負圧で、においが居室側へ回らない流れを作る。
3. よくあるNGパターンと改修の方向性
- NG1:換気扇はあるが、扉の隙間が無い → ドア下端のカット or 移動用ガラリ追加。
- NG2:廊下が無風で“袋小路” → 給気口の位置変更(玄関・居室に近い側へ)と排気強化。
- NG3:収納に給気も排気も無い → 扉のスリット化+近接排気(洗面・トイレ側)へ経路確保。
- NG4:24h停止→必要時のみ強運転 → 弱連続運転に戻し、フィルター清掃・風量復旧。
- NG5:ダクトの屈曲過多/グリル詰まり → ダクト経路見直しと端末清掃で静圧改善。
4. 空間別の改善術(洗面・脱衣・収納・玄関)
4-1. 洗面・脱衣室
- 排気強化:24h弱連続+入浴時の強運転。湿度連動やタイマーの追加で“切り忘れ”を防止。
- 給気導線:廊下側からドア下10〜15mmのアンダーカット/移動ガラリ。
- 部材:親水性壁材・天井、可動棚で滞留低減。
- 補助策:梅雨期は衣類乾燥除湿機の併用で洗濯動線を最短化。
4-2. 収納(クローゼット・パントリー)
- スリット扉またはルーバー扉に変更。背面に断熱パネル(外壁面)で表面温度↑。
- 可動棚の通気化:棚板の後ろ数cmを欠き、壁付けを避ける。
- 近接排気:収納近くの洗面・トイレ・廊下排気へ流路を誘導。
- 吸放湿材:エリア限定で調湿ボード/珪藻土を活用。
4-3. 玄関
- におい源の分離:靴収納を気密扉付き下足入れに。換気口または小型ファンを組込み。
- 通風計画:玄関脇の給気口位置を調整し、廊下→洗面・トイレへ負圧誘導。
- 断熱:断熱玄関ドアや敷居の気密で冷気侵入を抑え結露を低減。
5. 小規模工事の費用感と効果目安(参考レンジ)
- ドア下アンダーカット:1〜3万円/枚
- 移動用ガラリ新設:1.5〜4万円/箇所
- 給気口(フィルター付)増設/位置移動:2〜6万円/箇所
- 換気扇更新(静音・湿度/人感連動):2〜8万円/台
- 収納扉スリット化/ルーバー扉交換:3〜10万円/箇所
- 小型ダクトファン組込み(下足入れ等):3〜8万円/台
いずれも現場条件で上下します。複数箇所を同時施工すると養生・出張の効率化でコスト最適化が可能です。
6. センサー活用と“見える化”(CO2・温湿度・差圧)
- CO2センサー:1,000ppm以下を目安に。洗面・玄関・寝室の3点測定で家全体の傾向を把握。
- 温湿度ロガー:梅雨・冬のピーク時データを1〜2週間蓄積し、改善前後を比較。
- 差圧計:洗面・トイレ周りが軽い負圧になっているかを確認。
- スマート連動:湿度連動スイッチやスマートプラグで運転自動化。
7. メンテナンス頻度と再発防止ルーチン
- 排気グリル清掃:3か月ごとにホコリ除去で圧損低減。
- 給気フィルター:通常3か月に一度点検、花粉期は1〜2か月。
- 換気扇本体:年1回の分解清掃/耐用10年前後で更新検討。
- 収納内:季節替わりで入替・乾拭き。壁面の黒点は拡大前に除去。
8. 事例フォーマット(Before/Afterの見せ方)
- Before:築年数・間取り、症状(におい/カビ/結露)、測定値(RH・CO2)。
- Plan:経路図(矢印で可視化)、アンダーカット寸法、給気口位置、換気扇仕様。
- Cost/Term:費用レンジ・工期(例:半日〜1日×2箇所)。
- After:測定値の変化、洗濯乾燥時間の短縮、におい残留の自覚評価。
- Notes:メンテ頻度・季節別運用(梅雨/冬の設定)。
9. よくある質問(FAQ)
Q. 換気量を増やすほど電気代が上がりませんか?
A. 弱連続+必要時強運転が最も効率的。経路改善で必要風量自体を抑えられるため、トータルで削減に繋がるケースが多いです。
Q. ドアのアンダーカットで隙間風や音漏れは?
A. 10〜15mm程度なら体感の影響は軽微。音が気になる場合は移動用ガラリで対応します。
Q. 収納のカビを根絶できますか?
A. 断熱補強+通気化+近接排気の3点セットで再発率は大幅低減。除湿剤のみでは根治しません。
Q. マンションでもできる?
A. 専有部内の扉加工・ガラリ・換気扇更新は可能なことが多いですが、共用部ダクトに関わる場合は管理規約・理事会承認が必要です。
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